アカウミガメ(ウミガメ科)
別名:あか亀
<生息域と産卵地>
世界の大洋の低緯度海域に生息し、主な産卵場はアメリカ東海岸、ブラジル、南アフリカ、ギリシャなど。南太平洋ではオーストラリア東岸、北太平洋では日本が唯一の産卵地である。鹿児島県屋久島は特に重要な産卵地で、日本に上陸するアカウミガメの約3分の1が屋久島に上陸している。
<特徴と名前の由来>
首から頭部が、他のウミガメに比べて大きく頑丈。英名Loggerhead turtleのロガーヘッドは、木材の丸太(ログ)のような頭の意味である。体色は背面が赤褐色、腹甲は淡黄色。
<日本での産卵状況>
国内のアカウミガメの産卵回数は減少傾向が続いている。大島も他の伊豆諸島でも、その傾向は変わらない。
<砂浜環境の悪化>
砂浜は本来、波・風・雨によって砂が移動し、浄化されることで環境が保たれている。
しかし産卵地となる海岸の環境の悪化が指摘されている。砂浜は本来、波・風・雨などにより、砂が移動を繰り返し、浄化されて美しさが保たれている。
砂浜の沖合に離岸堤などの人工物が造られると、砂の移動が制限され、固まって産卵巣が掘りにくくなったり、有機物が多くなって孵化率が低下する。
また、大島の場合、砂は山から沢を下って供給されるが、その動きを止めてしまうと砂浜は縮小していく。
全国的な砂浜の減少は、北太平洋の唯一のアカウミガメ産卵地を保全するための課題となっている。
<成体メスの行動と潜水記録>
成体メスは産卵期に、砂浜の沖に留まって次の産卵日まで、ほとんど採餌せず海底にいる。潜水深度は平均5~16m、最大で233mの記録がある。
潜水時間は、平均6分~54分、最大90分。
また、日本列島で産卵を終えた一部のカメは東シナ海へ回遊して過ごすが、
昼間は100m~150mの海底で採餌し、夜間は主に0~25mの浅い場所にいる。成体メスの潜水時間は平均23~29分、最大で320分という記録がある。
これらは、人工衛星対応型発信機の開発が進んだことで得られてきた記録とのこと。
<ウミガメと人との関わり>
ウミガメは色々な物語に登場し、日本の自然の大切な象徴の1つである。
<混獲による被害>
1970年代の米国南部では、アカウミガメなどの死亡漂着が多い年には5万頭にもなり、エビトロール網による目的以外の種が捕獲される混獲が原因であるとされ、トロール網にウミガメ排除装置が開発された。その結果、死亡漂着は半減した。信頼できるデータに基づく概算では、2000年の1年間だけで、全世界で20万頭のアカウミガメが混獲されたと見積もられている。1992年に国連決議で公海での流し網漁が中止となり、延縄漁は漁具の改良や設置水深の見直しが行われた。また、沿岸漁業も遠洋漁業に匹敵しうるウミガメへの影響が指摘されている。
<新島での昔の漁>
昔は、新島でもウミガメ漁が行われていたが、海中の赤亀(本種)を見つけ近づく時には、まず、薪木を持って潜り、それをカメの口にくわえさせてから捕ったと記されている。アカウミガメは堅い巻貝もくだいて食べる強力な口をしている。陸上での観察や保護活動の際には、噛まれて大ケガをしないよう注意が必要だ。
<大島でのエピソード>
以前、元町弘法浜で小学生が海水浴をしながら、南側の「さんかく磯」の潮溜まりで遊んでいる時、ウミガメの子ガメを1匹見つけ海へ逃がしてやったという。その話を聞いて、詳しく尋ねると、色や大きさからアカウミガメの孵化幼体と推測されたが、その頃に弘法浜や地曳浜で孵化予定はなかった。
すぐ前に見える伊豆半島にも、その西側の御前崎から遠州灘海岸にもアカウミガメの産卵地は点在している。西から東へ向かう海流に運ばれて来た子ガメではないかと推測された。
<子ガメの旅と回遊>
子ガメたちは、砂の中から脱出して海へ下ると、1~2日泳ぎ続けた後、漂流物に体をあずけたり、潮目に漂う海藻などと共に流れに身を任せて太平洋に拡散し、はるかメキシコ沿岸へ行けた個体は20~30年過ごして成体になる頃に、再び日本列島近海へ戻ってくることが知られるようになった。

1995年8月3日、通常はより安全な夜間のに上陸し産卵を終えて海へ帰る。甲長約93cm。

北端の野田浜でも産卵孵化が確認されている。大島では砂浜であれば人工海浜の岡田日の出浜でも、トライアスロン・スイムのため砂を敷いた五輪の沢口でも上陸・産卵があり、今後もその可能性はある。親亀は、まず体がスッポリ入る程の穴を掘り、次に後肢だけで産卵巣穴を掘る。地表面からの深さ60cm前後。

右側の人の手と比べると大きさが分かる。涙に見えるのは、海水を飲んで余分な塩分を排出する器官(塩類腺)が目の横にあるから。

例外的に朝になっても帰り遅れたり、昼間に上陸する場合がある。

背甲の鱗板の配列は、中央タテの椎甲板が5枚、その両側に肋甲板が5対。

ウミガメには様々な付着物(共生生物)がいる。これは、最も目立つカメフジツボ。

1度に産む卵の数は、110個前後。

上陸痕跡の形や幅は種によって、個体の大きさによって異なる。

子ガメが孵化して砂中から脱出するのは、通常は安全な夜中の内だが、中には明るくなってから遅れて出る個体もある。

夜間に地上へ出た子ガメたちが、道路の照明に誘引され、海の方向を見失って砂浜で息絶えた。
*極力ストレスをかけないよう明かりや行動のタイミングを考慮しております