ユビナガコウモリ (ユビナガコウモリ科)
<分布>
中央アジア、インド、スリランカ、東南アジアの一部、中国、台湾、ロシア極東、
日本国内では、本州、四国、九州、佐渡、隠岐、福江島、対馬、壱岐、甑諸島、屋久島、伊豆諸島では大島でのみ確認されている。
(奄美大島以南の島に分布するリュウキュウユビナガコウモリとは別種)
<ねぐら>
洞窟、トンネル、海蝕洞、防空壕、地下水路、直線的に飛ぶため広い空間を好む。
<特徴>
前腕の第3指(人の中指)が非常に長い。第4指と第5指は短い。このため翼は狭く長い。焦げ茶色の体毛は短く密生し、なめらかで柔らか。
<生態>
樹冠の上空を高速で直線的に飛行しながら口から超音波を発して夜行性の昆虫を捕食する。体長25mm以下のガ、ハエ、甲虫類などを好む。
小形コウモリは一日に体重の5分の1~3分の1もの昆虫を食べる。
日本では8月中旬~10月上旬が繁殖期。受精した卵子はすぐに着床せず卵管内を漂い、条件が整ってから着床して細胞分裂を開始する「着床遅延タイプ」という特別な繁殖の仕方である。熱帯域では胎児の成長が交尾後すぐに始まる(北半球では3月、南半球では10月)が、温帯域では、胚の発生は初期で止まり、子宮内に着床しない。4~5か月も遅れた後、春になって初めて着床し妊娠へ。3月中旬~6月上旬が妊娠期。春に出産哺育洞へ移動する。1産1子で、新生子は無毛、閉眼。6月中旬~8月中旬が授乳期。2年目から性成熟して出産する。
ねぐらでは群塊を形成し数百頭、千頭規模の集団になることもある。房総半島や伊豆半島では、大規模ねぐらが確認されている。伊豆半島の実験では、一晩の内に80㎞先から帰巣した。東北地方では、日本海側の海蝕洞などでの生息が知られている。瀬戸内海を挟んで、山陽地方と四国とを行き来する海上の渡りも確認されている。大島から房総半島へは約36km、伊豆半島へは約23kmであり、この距離なら渡れそうである。また、大島東岸には海蝕洞がいくつかあり生息の可能性もある。
<都内の記録>
ユビナガコウモリの東京都内での記録は非常に少ないようである。
1934年『Lansania, 6』の「大東京の哺乳動物について」によると、「薄暗くなると早速出て飛ぶ非常に速いコウモリであって、王子(現在の北区)、板橋、江戸川の諸区には多い」と記されている。
2009年9月上旬、都立大島公園と海のふるさと村を結ぶ「行者海岸トンネル」の天井に小型コウモリの小集団が発見された。9月25日の昼間に調べると8頭確認できた。10月2日にその内の1頭の飛翔姿を撮影でき、「コウモリの会」の事務局でユビナガコウモリと判定して頂いた。東京都から調査のための捕獲許可を得て、11月9日に1頭の捕獲を行い、外部計測後にトンネル口で放獣した。この時の記録は下記のようだった。
ユビナガコウモリ オス 前腕長 46.3mm 頭胴長 57.2mm 体重 12g
スウェーデン ピーターソン社製バットディデクター ウルトラサウンドD―200(音域7.78~131.5 kHz)
を使用した音声の受信範囲は、26.9~130kHzだった。(コウモリが天井にいる時から捕獲中に測定)
あきる野市で、2013年11月17日の目撃された例がある。夕方、秋川橋の水銀灯に集まる昆虫類をねらって飛来するコウモリを撮影していた「東京コウモリ研究会」の研究者が、やや大型のコウモリ1個体を撮影したところユビナガコウモリの特徴が見られ、本種の可能性が高いと報告している。

大島でユビナガコウモリが確認された行者海岸トンネル口

トンネル内を飛翔するユビナガコウモリ

トンネルの天井隅にぶら下がる1頭

トンネルの天井隅にいる小さな群塊。8頭ほどが集まっている